No.73(5月14日)


シリアル・ラヴァー(98年フランス)

監・脚:ジェームズ・ユット
脚:ロマン・ベルミトウ
出:ミシェル・ラロック/アルベール・デュポンテル/エリーズ・ティエルローイ

切れ味の良い包丁ってのは真に恐ろしいもので、たとえキッチンであっても、たとえ誰もいないと思っていても決して振り回してはならない。自分の指を切るだけならいいけど、人さまの心の臓をひと突き、なんてなったら目もあてられないからね。

クレールは35才のまあ、外見は普通の独身女性。だけどもてるのよ。現在お付き合いをしている男性3人を呼んでのディナーの席で結婚相手を決めようとしちゃうの。男性にとっては迷惑な話だよね。っていうだけではすまなくなってしまう悪夢がキッチンで始まる。そう死体がゴロリとひとつ出来上がり。事故なのにそれを隠そうとするからますます深みにはまってさあ大変。あっちにもこっちにも死体が...。

その凶器となるのがどこの家にでもありそうな、ありふれたものって言うのが怖い。キャスト・アウェイでは歯科医の替わりを勤めたアイススケート靴、この映画では別の使い方を学べる。家に一つ常備しておくと便利だしもっと別の使い道も思いついて良いかも。

コメディーとスプラッターを合体させてロマンスの香りを吹きかけたかのようなおもしろさ。もうむちゃくちゃでんがな〜。そしてやっぱりそう来ましたか、って感じの大喝采のラストで大いに満足。




隣のヒットマン(00年アメリカ)

監:ジョナサン・リン
脚:ミッチェル・カプナー
出:ブルース・ウィリス/マシュー・ペリー/ロザンナ・アークウェット

悪妻を持つと苦労するわね〜、と同情。と同時にあまりにも情けなくてつい笑っちゃうんだけどね。というのが主人公のお人好しで人生あきらめ気分の歯科医オズ。妻の亡父の借金まで払っているのに愛されないどころか「早く死ね!」って態度をされたら、車に八つ当たりするしかないよ。

そんな夫婦の隣に引っ越してきたのが伝説の殺し屋ジミー。けど知りあってみると意外といいヤツじゃん。仕事には冷酷無比で厳しいが心優しい殺し屋って感じ。と思ったのもつかの間、妻にそそのかされて大トラブルに巻き込まれることになっちゃうのよ。

キャラクター設定がうまくてすっごくおもしろいの。あたふたしまくって、どつぼにはまっていくオズにペリーが役にはまりまくりで大笑い。ブルースも粋な殺し屋を余裕で演じていて楽しそう。そして久々のアークウェットもいいわ〜、と喜びたいところだけれど、かつてファンであった私としてはこのキャラクターと老け方はちょっと悲しい...。




チキン・ラン(00年イギリス)

監・脚:ピーター・ロード/ニック・パーク

いや〜、なんとニワトリに歯がある。おまけに可愛くない。ニワトリというよりもダチョウ体形。なんだけれどもみんな個性的で表情豊かで楽しい。粘土アニメというのに、まぁ、よくこれだけ細かく動かせるな〜、と関心。画面の細部まで神経行き届いていて見逃してなるものかって気合いが入っちゃう。口の動きは完全に合っているし、羽根がヒラヒラ舞っちゃうという芸の細かさは必見。

養鶏場から何度なく脱走を繰り返し、その度に見事に失敗するニワトリ達の前に空を飛べるスーパーニワトリが出現。果たして彼は救世主なのか?

映像の素晴らしさの割にはお話が一直線で子供向き、って感じはするけど、楽しいのが一番だもんね。ニコニコして映画館を出られれば満足よ。




クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲(01年日本)

監・脚:原恵一

誰が何と言おうと絶対に観たくない映画のベスト1、であったのよ。今までは。あの動いているのか止まっているのか分からない動画、あの主人公のしゃべり方。予告編観ただけでも、も〜、だいっきらい〜。

ところが周りは褒めるし、私が映画を観る際の参考にしている「GAY CINEMA COMPLEX」というWeb Siteで今年のベスト1とまで言っちゃっているので、意を決して観に行ったわけ...。

…………と、なんとこれがすっごく良いのよ〜。ストーリーも良く練られているしギャグも決まっているしで動き、しゃべり方なんて気にならなくなっちゃって、大笑いの後のラストでは感動までしてしまったわ。

いきなり70年の万博が出てきたり(私も行ったけど、混んでいて月の石を見られなかった、悔しい〜)、挿入歌はBUZZ、ベッツィ&クリス、ラストは吉田拓郎。でぃ、まいったか、って感じ。ストーリーは70年代を世界的に再現しようと目論むやつらをしんちゃん親子が阻止するという高尚な(?)もの。これって、親子で観に来る映画でしょ。でも子供より親の方が喜ぶ、というか子供ってこれわかるのかしら、と心配しちゃった。(親と言っても40代以上限定ね)あ〜、面白かった〜。




キャスト・アウェイ(00年アメリカ)

監:ロバート・ゼメキス
脚:ウィリアム・ブロイルスJr.
出:トム・ハンクス/ヘレン・ハント

トム・ハンクス演じるチャックは宅配便フェデックスのシステム・エンジニアで、世界中を駆け巡り、一秒も時間を無駄にしないのが信条。冒頭で箱にくっついているかのようなカメラがその喧騒の世界を見事に表現している。恋人のケリーとのデートも正に秒刻みの忙しさ。

そんなチャックが飛行機事故に遭って無人島に一人残されてしまうのよ。わたしだったら多分3日と生きていられないであろうな。水と食料を手に入れ、孤独と戦うなんて絶対に無理。この島にはおしゃべりなオウムも、ひょうきんな猿もいないのよ。話し相手は友達に見立てたバレーボールだけ。

この島で暮らさざるを得なくなった彼だけど、その変貌ぶりがすごい。最初はちょっとお腹が出ている普通の中年体形。4年後の彼は引き締まった身体。それだけじゃないのね。顔に刻まれた深いしわと絶望の末の虚無的な瞳。それが過酷な現実、サバイバルを物語っていて鳥肌がたってくるほど。

ヘタな監督だったらBGMがなりっぱなしで大感動盛り上げ大会のようなことになっていたような気がするけど、聞こえてくるのは波の音や、風の音などの自然の音だけで、静寂の中で極めて淡々と時間が流れていく。台詞もほとんどなくて、よりいっそう孤独感が響いてくるのね。さすがゼメキス、うまい、って感じ。そしてほとんど出ずっぱりのトム・ハンクスが素晴らしいのは言うまでもない。逆に言えばゼメキスとトムのコンビでなかったら地味すぎて誰も観に行かないような題材だよね。




アタック・ナンバーハーフ(00年タイ)

監・脚:ヨンユット・トンコントーン
脚:ウィスティチャイ・ブンカンジャナー
出:チャイチャーン・ニムブーンサワット/サハーバーブ・ウィラカーミン

なんたってこれがほとんど実話、っていうんだからびっくり。おなべな監督に率いられたオカマのバレー選手達が国体優勝を目指す。世の中何が起こるか分からない。事実は映画より奇なり、ってこと。

いろいろイヤな事は多いけれども、選手達みんな前向きで底抜けの明るさ、そしてパワー全開っていうのがいいわ〜。ホントはもっとドロドロした部分ってあったんだろうけれども、そんなことはこの映画には似合わない。中でもオカマパワーが最高にはじけているジュンちゃんがいいのよ。あの底抜けに明るい笑顔を観ていると小さいことで悩んでいるのがバカらしくなるわね。一人だけ完全に性転換したピア嬢の美しさにはノックアウトされちゃったし。

一人だけストレート、黒一点(?)のキャプテンの戸惑いも笑えるわ。時々ベタすぎる笑いに疲れちゃうけど、小さいことは気にしない、気にしない。観終わって元気モリモリとちょっぴりの感動を味わえる、こんな単純明快な映画ってだ〜い好き。

エンドロールでモデルとなった彼らの姿が映るんだけれども、これまた傑作で、映画が決してオーバーではなかったことが分かってうれしくなっちゃったわ。




花様年華(00年香港)

監・脚:ウォン・カーウァイ
出:トニー・レオン/マギー・チャン

62年の香港。まるで下宿のような作りのアパートに二組の夫婦が隣同士として越してきたの。片方の妻がマギーで、片方の夫がトニーね。なんとお互いの連れ合いが浮気をしていたの。そのことを知ってしまった二人は復讐のために密会を重ねるうちに魅かれていくのだけれども、罪悪感からか最後の一線は越えないのよ。その越えそうで越えない雰囲気、仕草などがサスペンス風でドキドキしちゃった。それをほとんどプライバシーのないアパートの雰囲気、狭いホテルの一室が助長する。

マギーの夫、トニーの妻の顔を全く見せなかったり、カメラの外で重要な事が起こっていたりと観客に想像させる手法が素晴らしい。徹底的に二人に迫っているカメラも効果的。鏡越しに相手を盗み見する時の表情の切ないこと。忘れられないわ。ラブシーンが全くないのに濃密な恋の物語を描いてしまったっていうのがすごいよね。

そして見どころはそれだけじゃないの。マギーのチャイナドレスの美しいこと、官能的なこと。ドキッとするほど素敵なのよ〜。

と、大満足であったわたしに隣の若い女性ふたりの会話が聞こえてきた。「さっさと寝りゃあいいのに、バカップルだよね」だって。切ない男女の心のヒダヒダが全然分からないのね〜。




日本の黒い夏[冤罪](00年日本)

監・脚:熊井啓
出:中井貴一/寺尾聰/石橋蓮司

国家権力とマスコミの暴走ぶり、それを疑問もなく信じてしまう私たち。そういった流れに押しつぶされずに自分の無実を主張し続け、それを支え合う家族。自分もサリンを吸ってしまい、重症の身でありながら警察に7時間も「おまえが犯人だ!」なんて責め続けられても屈しないとはなんという強さだろう。自分だったらケネディ暗殺までも白状してしまうかも。

イヤ〜、しかしホントに怖いよ。証拠不十分どころかろくに調べもせずに犯人扱い。なぜかわたしは職務質問を良く受けるのだけれどちょっと歯車狂えば塀の中、なんてイヤダヨ。

「松本サリン事件」と言う実際に起こった惨事を題材にした社会派で、映画的にはどうかな〜って思うところもあるけどこれはやっぱり観るべき。高校生の取材にTV局の社員全員があれほどの時間を費やすわけないやんけ〜ってのが一番ひっかかるのよね。女子高校生役の子も表情堅いだけで華がないしな〜。なんかそこだけNHKの中学生日記を見ている気分だもん。




=僕のお気に入りの映画(^0^)
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