No.160(1月2日)


パプリカ

06年日本 90分
[監][脚][声]今敏
[原][声]筒井康隆
[脚]水上清資
[声]林原めぐみ/江守徹/堀勝之祐/古谷徹/大塚明夫/山寺宏一/田中秀幸

他人の夢の話を聞かされるほど退屈ことはない!ということだけれどこの悪夢は飛びっきり極上で極悪で極彩色で大興奮。冷蔵庫などの家電製品,日本人形,自由の女神,カエルなどが一緒に街を練り歩く様はアニメならではの描写で圧巻。その中を主人公の美少女が縦横無尽に飛び回る様子はエロチックでもある。

患者の見ている夢を映像化し,共有できるマシン「DCミニ」。研究所の敦子はそれを使い、パプリカという美少女の姿で患者の悩みの原因を突き止めるサイコセラピストなのだ。ところがDCミニが盗まれ、研究員らの意識がのっとられる事件が起こる。というのは発端でもっともっとやばい事が!そして敦子はDCミニの発明者の時田,刑事の粉川らと共に犯人探しに乗り出す。

サスペンス+SF風味なストーリーと映像表現が見事にマッチしていて観ていて気持ちが良い。キャラも適材適所で,推定体重250キロのデブの活躍も楽しい。過去のトラウマを抱えた刑事の粉川の夢の中は興味津々。

これはアニメが苦手な人にも観てほしい。ハリウッドでは3D-CGアニメが全盛だけど,日本での平面アニメの完成度の高さに圧倒されるはず。注意点は子供向けではないので大人同士で観に行くように,ということかな。

昔は熱心な筒井読者だったのにこれは読んでいない。新年1冊目はこれを読む事にしよう。




硫黄島からの手紙

06年アメリカ
[監]クリント・イーストウッド
[出]渡辺謙/二宮和也/中村獅童/伊原剛志/加瀬亮

日本人でありながら硫黄島の事は何にも知らなかったのだな,と深く反省。でも映画的にはイマイチであった。戦闘シーンがリアルなのも素晴らしく,日本映画にありがちは過度な情感も極力廃しているのも良いのだけれど,結局何を言いたかったの?って感じ。「父親達の星条旗」ではあの1枚の写真の裏に様々な出来事を拝して戦争の空しさバカバカしさを表現していて流石って思ったのだが,ただ事実を列挙しただけ。まあそこからの読解力が私にはなかったという事かも知れないけど。それに多分期待が大きすぎたのかも…。

硫黄島のある意味ヒーローの栗林中将を主人公に置きながら英雄的な行為を敢えて描かなかったということで言いたい事は分かるのだが,逆に無理があったのではないかしら。戦闘シーンが長いだけでストーリー構成も単純だったし,35日間も飲まず食わずで戦い続けた割には兵士達は元気そうだったのも違和感が。時間の経過が分かりにくかったのも残念。

ただハリウッドによってこのような映画が作られたのはホントに凄いし,日本人俳優達も素晴らしかった。あの言葉もあったのはアジアという呪縛がなかったからか。というか逆に日本映画頑張れよ!って思ったよ。来年夏に公開(石原都知事推薦)の予告編を流していたのだけれど「相変わらずだな」って感じだもの。




武士の一分

06年日本 121分
監][脚]山田洋次
[脚]山本一郎/平松恵美子
[出]木村拓哉/檀れい/笹野高史/坂東三津五郎/緒形拳/桃井かおり

勧善懲悪ものやバッタバッタと人を斬り殺していく時代劇とは随分と趣が違って,日常を細やかに描いていて素晴らしい。家族・夫婦っていいな〜って素直に思わせるストーリーは感動的で思わず泣いてしまったよ。感動的といっても「泣け!」って強制されている感じじゃないのがいいな。ラストには「果し合い」があるけれどおまけ的な扱いで普通の時代劇の感覚からするとちょっと拍子抜けで黒沢的なものとは正反対。もちろん迫力十分で手抜きしているという意味ではないよ。

藩主の毒見役を務める下級武士の三村新之丞は、妻の加世と穏やかな生活を送っていた。ボロいけれども隅々まで目が行き届いている家屋,庭でのシーンがほとんどなのだけれど,ちっとも退屈しないのね。何度も出てくる質素な食事のシーンも二人の信頼関係が感じられて良い感じ。そう,一粒のご飯も無駄にしてはいけないのだ。そして二人に仕える正直者で心配性の徳平との関係がまた良いのよ。3人での言葉のやり取りがユーモアがあるし悪態をついていても温かいのね。長年一緒に暮らした信頼関係の強さが感じられる。

そんなのどかな日常が新之丞の事故をきっかけとしてどんどん不幸の連鎖になってしまい,お互いのことを想うが故にすれ違い、押し寄せる運命は悲しすぎる。不自由な身体になりながらも「武士の一分」のために無謀とも思える行動に出るのを納得できるのは前半の細やかな描写のおかげ。

最初は木村拓哉ってどうよって思ったけど後半はどんどん迫力がまし眼光も鋭くなってアイドルということを忘れてしまう。佳世役の檀れいが美しくて清楚で,一歩引いて純粋に夫を思い続けるひたむきさがいいな〜。そして徳平を演じた笹野高史がまたいい味出しているのよ。彼がいなかったらこの映画の面白さ半減だったかも。また出番は少ないけど桃井かおり、緒形拳の存在感はさすが。

そこはかとないユーモア,季節を感じさせる風景,夫婦の愛情,武士道など色々描かれていて時代劇・日本映画の素晴らしさを感じさせてくれて大満足。そうそう,髪の毛の伸び具合,着る物のよれよれ具合など細かいところにも目が行き届いているので安心して観ていられるのもポイント高し。




エラゴン 遺志を継ぐ者

06年アメリカ 104分
[監]シュテフェン・ファンマイアー
[出]エド・スペリーアス/ジェレミー・アイアンズ/シエンナ・ギロリー/ジョン・マルコビッチ

もう,何といってもジェレミー・アイアンズがムチャクチャかっこいいのよ〜。今,58歳だから「じじい」と呼ぶにはまだ早いのだ。外見は薄汚れ,また老いていてもその内面には騎士の魂が宿っている,ていう役どころにぴったり。中盤以降出番がなくなってしまうのはあまりにもったいない。シリーズを通して出て欲しかったな。それに比較するとジョン・マルコビッチはあんまり冴えない。活躍は次作以降か?

そしてドラゴンの生物感は素晴らしい。といっても最近のVFXの進歩でどんな生物でも「そこにいる」っていうのが当たり前になってしまっているので衝撃的というほどではないのはしょうがないか。メスのドラゴンなので一心同体のライダーとの心理的つながりが微妙にエロチックなのが新鮮。生まれたての様子も可愛い。大きくならないなら1匹欲しいな。

で肝心の本編の感想なのだが,ん〜,面白いんだけど,なんか物足りない。なんでかって言うと主人公の苦悩や挫折,それに手に汗握る危機的状況があんまり伝わってこないからなのだ。ドラゴンライダーになんとなくなって,なんとなく戦いに加わって,という感じなのだよ。成長の跡も希薄だし最初から最後まで優等生っぽいのも物足りない。これは104分という短さに原因があるのだろう。ロード・オブ・ザ・リングほど長くなくてはいいけれど,あと30分長くしてそこら辺をじっくり描写してくれたらもっともっと面白くなったのではないかしら。

でも次作も観てしまうけど。って制作されるよね?




=お気に入りの映画(^0^)
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